森見登美彦四畳半神話大系太田出版,読了.同じような話が4話続くという辺り,やや飽きを感じさせるものの,全体として面白く読みました.あまりに鬱屈した腐れ縁を,徹底して無駄にペダンチックに描いて楽しい.人を選ぶ文章ではありますが.前作は日本ファンタジーノベル大賞を受賞しており,「ファンタジーとは思考の開放でなく,鬱屈した妄想のことだったのか」と新たな視点を提供してくれました.今回もその延長上かと途中まで思いきや,最終話はある種一般的なファンタジーになっていました.まあ,4話全体を通じても平行世界ですし,ある種のファンタジーですねえ.平行世界とはいえ,腐れ縁は変化がなく,のび太の未来を変えるべくやってきたセワシと同様,セワシが生まれるという未来だけは何故か変更がないドラえもんチックなファンタジー藤子不二雄はこの小説の場所を30年前に通過している.ああ,藤子不二雄は偉大なり.…って話が少し変わってきたな.
それにつけても,この本をとらのあなで見つけたのはあまりにも意外で,とてつもなくずっこけた.何で同人や漫画が主体の本屋に置いてあるのさ.しかも平積みで.漫画とハードカバー小説という対象商品の違いを超える何かが,特にオタク御用達のお店に魅入られるような何かが,この本にゃあるってことなのかい.まあ,そんな本なのでしょうねえ.
で,本文にある,ある種破滅の比喩の下り,「やることなすことすべてがうまくいかず,〜四条通りでキャッチセールスに引っかかるなど〜」という部分.「四条通り」は「新京極通り」のほうがふさわしいと思います.まあこれに限らず,鴨川デルタという地名が出てくるなど,京都の地理にある程度詳しくないと洒落とかが通じにくい本かも知れません.