希望格差社会

経済っていうか,別のジャンルなんだろうけど,別のカテゴリーを作るのも整理が取れないので経済に分類して備忘.山田昌弘希望格差社会筑摩書房を読了.世間的にはおおむね好評な本であるみたいだけど,私は納得できない.まず,些細な用語法の違和感として,「リスクフル」って言葉は何だ? 「リスキー」とどう違うんだ?
そして「リスクフル」な社会と二極化した社会になった原因として,この本が強調しているのがニューエコノミーなわけなんだけども.ニューエコノミーの突然で降って湧いた感が否めない.ニューエコノミーとリスキーな社会の結びつきが突然という感があるし,ニューエコノミーはそんなに突然唐突に出現したのかよ,という風にも思う.ということで,「ニューエコノミーの出現」は,この本の分析の外に置かれてしまっているんですよねえ.重要なのに.んで,こういう問題が噴出したのが98年なんだとか.きわめて唐突だ.ニューエコノミーは98年に一気に噴出したのか(この文章は,意地の悪い誤読.「認識される」ようになったのが98年と,本書では記されています).
98年が問題なのは不況ですよ不況.私はニューエコノミーではなく,不況だと思う.そして,不況になったのは政策ミス.原因は増税金融危機.本書で98年が境だとする補強に使っている二つの文献も,どっちかっていうと不況と98年を結びつけたものじゃないのかな.不況をきっかけにした社会の変質があったかは,分析しなくちゃならんけど.
ということで,現状の分析は楽しい本なんだけど(希望格差って簡潔な一言で表したのはセンスが光ると思う),因果の結びつけが足りない本だと思う.