団亭鞘次郎氏の「ブサック帝国の没落とその原因」

当備忘録はあまり外部のブログや個人サイトを参照しないのですが,最近少々復活された団亭鞘次郎氏の「ブサック帝国の没落とその原因」は大変に読み応えがあります.マルセル・ブサックの配合手法は特徴的で(凱旋門賞馬Coronationが好例),大繁栄期を経,急速な没落を経験しました.その没落の原因は,良く配合手法の特徴であるところの近親交配に帰せられています.鞘次郎氏の上のリンクの記事では,その近親交配以外の多くの要因がブサック帝国の没落に寄与したのだと述べています.どの牧場でも直面する時期や戦略,その悉くがたまたま大変な外れだったということなのですね.
ただ,私は読んで違和感を感じました.それほどの大きな外れが悉くたまたまなのか.たまたま種牡馬が死んだ時期が重なったのは不運です.しかし,新規導入種牡馬の失敗は,たまたまなのか.ジンクスとも言えるほどの失敗系統に注目してしまったということもあるでしょうが,特徴的配合手法を経た自家生産繁殖牝馬は,選り好みが激しかったのではないのか.つまり,狭い意味でのインブリーディング(近親交配)のみではなく,広い意味でのインブリーディング(みんな似たような繁殖ばかりになってしまった)が問題あったのではないかとも思うわけなのです.似たような繁殖ばかりだと,同一のネガティブなショックが全体に波及しますね.逆に同一のポジティブなショックは成功の連鎖となります.この意味でのインブリーディングは,とてつもなく成功と失敗の差が激しくなるのです.こちらの意味でのインブリーディングは,「インブリーディング」でぐぐれば人間社会の組織での話としても出てくるような言葉です(ぐぐるとすぐ出るように,大学教官のスタッフのそろえ方なんかが有名ですね.「純血」とか「外様」とか.前者がインブリーディングね).ということで,ブサック没落が近親交配のせいというのは,意味を広く取ればそれほど間違いではないんじゃないかなー,と思うわけなのです.